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【 切絵について 】

 

切絵はシンプルでありながら奥深く、伝統技術でありながらモダンな雰囲気を持ち、繊細でありながら大変力強い存在感を放つ、とても魅力的な世界です。こちらでは、そんな切絵の歴史や文化、魅力について、専門的な事や豆知識等も含めて御紹介していきたいと思います。


<切り絵の魅力を知る一歩>
 

「切り絵」という言葉は、実は昭和後期になってから、特定の作家によって一般に広められた経緯があります。それ以前は「紙切り」「切り紙」といった呼び方が一般的でした。「切り絵」という呼び名は、昭和40年代後半(1970年前後)、朝日新聞日の「切紙(紙切り)」連載の中から生まれました。それまでの「紙切り」が持つ伝統芸能的なイメージや、「切り紙」という素朴な呼称に対し、「切り絵」という言葉は、紙を素材として「絵画」や「美術作品」を創造するという、より芸術的な側面を強調する役割を果たすようになります。

 

「紙」という誰もが知る身近な素材でありながら、切るという単純な行為から無限の表現が生まれる。このシンプルさこそが、素材の本質的な魅力であり、現代においても多様な表現を可能にしています。時として、光と影、陰と陽といった二元的な要素を取り入れることで、作品に深みや物語性が生まれます。。この「切る」という行為自体が、描画とは異なる独自の表現手法なのです。

 

また、伝統の継承と革新の要素も持ち合わせています。

 

伊勢型紙のような伝統工芸の技術や、世界各地の切り紙文化の歴史を背景に持ちながらも、現代的なテーマや立体表現、インスタレーションといった新たな技法を取り入れることで、伝統的な枠組みを超えた現代アートへと昇華させる。この言葉を超えた視覚的体験では、言葉では伝えきれない感情や風景が、緻密で繊細なディテールによって視覚化されます。作品と鑑賞者が直接向き合い、感性に訴えかける力を重視しているのです。

 

現代の切り絵作家にとって、切り絵はもはや工芸や副次的な表現ではなく、独自の哲学に基づいた現代アートの一分野と言えるでしょう。

 

<伝統工芸・染色型紙としての切絵>

 

様々な伝統文化に関わりをもつ切絵ですが、日本では着物染めの型紙としての職人技であったことは広く知られています。紅型→伊勢型紙→江戸小紋 と、都にわたるにつれてその模様もどんどん緻密になっていくのですが、江戸時代では、模様が細かければ細かいほどファッショナブル!だったのですね。

 

以前紅型教室に参加させて頂いた事があります。型紙は大柄で味のあるものが多く、染めの作業は紙の抜き部分にノリをのせて布地の型抜き部分が染まらないようにし、染めの色を選んで重ねていきます。これがまた時間がかかります。江戸小紋を染めようとなると、その手間は想像もつきません。一つの着物が仕上がる過程の型抜きから染めまで、いかに手のこんだ作業であるかがわかり、伝統工芸の貴重さを感じました。

 

型抜きに使われる型紙は渋紙といって、生産技術が減っていく時代ではこれもまた貴重な品になっています。量産化が劇的に進む現代において、こうした貴重な伝統が守られていく為に私たちが出来る事は何かを考えさせられます。

<光と切絵>

 

切絵の魅力の一つに、光との相性の良さがあります。光を通して切絵を見た時に、今まで主役であった輪郭線が影となり、空白の部分がその役割を受け継ぐ。光も影も主役なのです。

 

バリの伝統的な人形の影絵劇、ワヤン・クリでは、皮で細工された人形や背景等に美しい切り模様があります。観客は両面から人形そのものの模様も、影絵としても楽しむ事が出来るように作られています。冬が長く寒いロシアでは、雪の結晶の折り切絵が古くから親しまれています。古代ロシアの白樺の透かし模様の皮細工がその由来と言われていますが、紙で出来たとけない雪の結晶を窓やランプシェイド等に貼り、日常の楽しみにしています。

 

このような絶妙な持ち味は、どの分野にも見られない表現で私たちを魅了します。切絵が広く深く、世界中で愛されている大きな理由なのではないかと思います。切り絵作家タンタンのワークショップでは、多くの場合、仕上げた切り絵をグリーティングカードや瓶のLEDランプに仕上げます。ランプシェイドは真っ暗にするとLEDキャンドルの光がゆらゆらと揺れて、癒しの空間をもたらします。

<手作業?機械?>

「切り絵は手作業ですか?」とのご質問をよく受ける事があります。アトリエタンタンでは、オリジナルを手作業、商品やデコレーション等で大量に切り絵を扱う場合には機械を用いています。

機械はカッティングマシンとレーザーマシンの2通りあります。カッティングマシーンではより手作業に近いオリジナル感を出す事が可能になります。レーザーマシンでは、より細かいディテールのカッティングが可能となります。

例えばアートフェアや展示会等に出展をする切り絵アートは手作業です。そうした切り絵アートから生まれた切り絵のジュエリーブランド、「KIRIEBIJOU」や、切り絵アートをより身近にお楽しみいただくための切り絵のレプリカを制作する際には機械を用いています。味わい深いのは勿論手作業です。

手作りを希望される方や、プロダクトデザインや広告デザイン等、一からデザインを起こして行く企画では、手作業を

​中心とした制作を行っております。

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<切り絵の発祥の地>

 

切り絵の真の歴史は、中国だと思われている方が多いようですが、実はインドにあると言われています。

「透かし彫り」の工芸品は古くからどこの国でも見られますが、昨今見られるような細かい細工・絵柄の切り絵は、インドで切り絵で出来た型紙に砂をまぶして、型紙を抜くとそこに砂でできた繊細な模様が浮かび上がり、それを神聖な祈りの儀式として使っていたことから始まりました。日本でも、宮崎県高千穂町で魔除けの神事としても使われていることから、切り絵が醸し出す神聖な雰囲気から、多くの地域で、そこに神が宿る、と考えられていたようです。

 

さて、インドから始まった切り絵は、中国からシルクロードをわたりヨーロッパへとわたります。

海をわたり、日本へも上陸するわけですが、そこで、先述した「沖縄紅型」となり、伊勢型紙や江戸小紋等、私たちが知る着物の初め型紙となっていきます。そうした流れから、沖縄紅型では、黄色や朱等が多く使われており、中国文化を思わせる色合いとなっています。

 

多くの歴史を持つ切り絵は、奥深く、普遍的な美をもち、いつの時代も人を魅了し、多くの国々で「伝統工芸」としてその国なりの進化を遂げながら、脈々と受け継がれているのです。

 

切り絵作家タンタンは、デザイン性、美しさの視点だけでなく、そうした歴史的背景を含め、文化的、伝統技術の観点からも、切り絵の素晴らしさを、現代アートを通して国内外にて発信して参りたいと考えております。

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<切り絵の再解釈──現代アートとしての新しい視点>

切り絵を現代アートとして捉える私の視点には、古代美術品の数々をはじめとし、ヨーロッパ・アメリカ・日本のアート文化に触れてきた経験が大きく影響しています。ヨーロッパでは、作品が歴史的文脈や物語と深く結びつき、“なぜこの作品が存在するのか”を説明できることが重視されていました。アメリカでは、ロジックやコンセプトの鋭さが評価される一方で、美術の歴史としてはまだ短く、作品と鑑賞者の間に距離を感じることもありました。

日本の現代アートは、欧米の潮流を主流としている傾向にあり、結果として伝統工芸や文化等の要素がちょっと物足りないという場面もあります。しかし本来、日本の美意識は侘び寂び、余白、自然観、職人技など、世界に誇る独自性を持っています。浮世絵が大衆文化から国際的評価へと昇華したように、“日常に開かれた芸術”こそ日本が得意としてきた姿です。

私は、切り絵に箔・日本画画材・光と影の要素を重ねる表現を通じて、日本の根源的な美意識と、古代美術がもつ普遍的な祈りの感覚を現代アートの言語として再解釈したい。“日本だからこそ生まれる現代アート”を探求することが、これからの文化の未来を形づくると信じています。

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